■ アメリカが困窮する公的医療保険の導入

2012年は、フランス、アメリカ、ロシア、そして中国と、世界の大国のトップが代わる年になる世界エレクション・イヤー(選挙年)だ。そのクライマックスが11月に本選投票を迎えるアメリカ大統領選。アメリカ大統領選がアイオワから幕を開けた。

その取材番組を見ていると、民主党オバマ大統領の支持率はどんどん下がり、かって投票した人でさえ共和党候補に投票すると言う人もいた。どうやら国民の不満は、低迷する経済と雇用の悪化に加えて公的医療保険(オバマケア)の不満にあるようだ。
多くの国民は口々に公的医療保険制度を「社会主義政策」だと批判する。私にアメリカ国民の感覚が分かるはずもないが、なぜ政府主導の医療保険制度の導入が民主主義に反するのだろうか?


ご存知の通り日本は国民皆保険制度である。これは元々100年続くドイツの制度を模して改良を加え日本に導入された制度のようだ。日本の健康保険制度は所得に応じて保険料が算定されて徴収される。そして医療の窓口負担は一般が3割負担、70歳以上は1割負担となっている。この制度があるため私たちは経済的に安心して医療を受けられる。

ちなみにドイツでは公的医療保険制度の保険料が年収の15.5%と高いが、その恩恵として医療費は原則無料、月額2万円の子供手当てが至急される。

一方アメリカでは健康保険に当たるものは民間の保険制度しかない。それに加入している人の割合はアメリカ国民の6人に1人という。その理由は保険料が高いためである。つまり無保険者は4700万人に及ぶ。例えば無保険者の医療費は出産で入院(2-3日)した場合、250万円。盲腸の手術は3-6万円となる。無保険者は安心して医療にかかることができない理由が経済的な負担である。
例えば町で急病人や誰かの事故に遭遇したとき、緊急の場合は日本では当たり前のように救急車を呼ぶ。特にその当事者に承諾を得ることは意識しなくてよい。しかし!アメリカは違う。本人に救急車を呼ぶかどうか承諾を得なければ問題が起こるのである。特に無保険者は経済的理由からできる限り医療を受けないようにしているからである。
今までアメリカでは企業が個人に代わって民間の健康保険制度を法人利用していた。それは雇用者の健康保険として利用されてきた。しかし減速するアメリカ経済に伴って個人は失業とともにこの健康保険が利用できなくなり、失業と健康保険の打ち切りのWパンチとなって貧困が加速化するのである。また企業も保険会社と契約中止や次期更新をしないなど困窮を極めているようだ。
アメリカ国民の多くは口々にヒラリークリントン議員、それに続くオバマ大統領が実現を目指す公的医療保険制度を「社会主義政策」だと言い、「どんな医療を受けたいかは個人が選択することであって、国が口出しすることではない」と批判する。アメリカンドリームという豊かな時代を享受してきた中産階級以上の人々にとってアメリカは世界最高の理想国家でなければならないのかも知れない。

Leave a Reply