■ 最初に感性を磨き、後でその意味を知ればよい

■ 最初に感性を磨き、後でその意味を知ればよい

【般若心経の由来】
▼日本人にはなじみのある般若心経(はんにゃしんぎょう)は僧侶のみならず在家信徒、また特に仏教徒でない人にもよく知られている経句です。これは玄奘三蔵、あるいは俗称、三蔵法師がインドから持ち帰った聖典の一つとされおよそ600巻に及ぶ教典群の真髄、あるいは集約されたものとも言われています。

実はこの教典の元はパーリ語というサンスクリッド語に近い言語で書かれていたと言われますが、現在一般に普及している基となったテキストは三蔵法師が漢訳したものとも言われ、『大般若波羅蜜多経(だいはんにゃはらみたしんぎょう)』と名づけられましたが、これは原文の発音に漢字を当てた訳ですから漢字は当て字、つまりそれ自体には意味がないのです。

▼この教典はサンスクリッド語にも翻訳されていますがそちらはよりパーリ語の原文に近いとされています。すると大般若波羅蜜多経 が Prajna Paramita Hrdaya Sutram(プラグニャ・パーラミタ・ハリーダヤム)とより原文に近くなります。つまりPrajna(般若) Paramita(波羅蜜多) Hrdaya(心) Sutram(経)というようにヨミカタの発音を漢字に当てた訳です。


大般若波羅蜜多経

大般若波羅蜜多経(漢訳・日本語版)

 
【あるヨーギとの出会い】

▼私が20代の頃、インド系移民でモーリシャス島で生まれ育ったマノジェという同年代のヨーギを友人を介して出会いました。モーリシャス島はインド移民が多いためインドの精神文化であるヨーガの道場が彼の育った場所にあったため、彼は幼少の頃からヨーガの練習や思想に慣れしたしんでいました。その彼は学校を卒業すると銀行に就職して社会人となったのですが、どうしてもヨーガの源流を学びたいという内なる声に従い、仕事を辞め自分のルーツであるインドへと旅立ちました。彼はそれから6年の歳月をサンスクリッド語の習得とサンスクリッドで書かれた多くの偉大な教典や古文書を通読しヴェーダの知恵を理解していったのです。その彼が私に読唱するように勧めてくれたのが大般若波羅蜜多経ではなく、Prajna Paramita Hrdaya Sutram(プラグニャ・パーラミタ・ハリーダヤム)なのでした。

Prajna Paramita Hrdaya Sutram (Sanskrit)

Prajna Paramita Hrdaya Sutram (Sanskrit Edition)

▼彼は20代にしてヨーギでありサンスクリッド語のパンディット(学者)でもありましたからその教句のヨミカタと意味をあますところなく教授してくれました。彼が最初にこれをサンスクリッド語で読んだときにそれまで寺院で聞いたことのあるヨミカタとあまりにも違うので驚いたことを今も覚えています。まるで歌を歌うかのようにメロディがあり、優しく、心地よいものでした。まるで数千年という悠久の時を経て当時の言霊に触れたような気分でした。

【最初に言霊、意味は後で知ればよい】
▼話を般若心経に戻しますが、実はこれも基を正せば釈迦が語った言葉なのです。その言葉には釈迦の気持ちや感情が込められていたはずです。それを聞いた弟子たちの心に言霊として入ったのだと推測します。それを後になって弟子たちがその言霊を広く後世に残るために編纂して書き残したわけです。しかし文字に釈迦の言霊のみならず弟子たちが感じた感情をそこに残すことはほぼ不可能なことであったと思います。いわんや原文の発音に漢字を当て字した現在の大般若波羅蜜多経はPrajna Paramita Hrdaya Sutramとは似ても似つかぬものになってしまったのではないかと思います。

▼ここにとても素晴らしいPrajna Paramita Hrdaya Sutram (Sanskrit) の詠唱をご紹介いたします。これはマレーシアの作曲家で歌手のImee Ooiが手がけた楽曲です。ほぼ原文に近いサンスクリッド語で歌っています。かつて私があるヨーギから直接聴いたときのような優しく、心地よい感性を蘇らせてくれた楽曲です。皆さんも数千年という悠久の時を経て釈迦の言霊に触れるような気分になっていただけれると幸いです。



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