■ 日本最古の医学全書『医心方』完訳という偉業

日本最古の医学全書『医心方』完訳。東洋医学の源流を照らす画期的業績】

【完全現代訳という偉業】
皆さんは日本で現存する最古の医学書である『医心方』をご存知でしょうか?
これは平安時代の宮中医官である鍼灸医であった丹波康頼撰による日本現存最古の医学書です。
全33巻からなる本文はすべて漢文で書かれているためその存在を知る人は多くありましたが、医学関係者も医学史の研究者も誰も読むことすらできませでした。
しかしそれを完全現代日本語訳という偉業をなした人がいるのです。それが慎佐知子(まき さちこ)氏です。古典医学研究家であり日本医学史学会会員である慎さんがついにその偉業を成し遂げ、その著作は筑摩書房より昨年2012年に発刊されました。
先日、弟が録音して聞いている「ラジオ深夜便」のインタヴューでご本人が登場されたらしく、その偉大な業績を知らずにはこのまま過ごせないと思い、調べて見たのです。


【医心方の概要】

医心方は、医師の倫理・医学総論・各種疾患に対する療法・保健衛生・養生法・医療技術・医学思想・房中術などから構成されています。
本文はすべて漢文で書かれており、唐代に存在した膨大な医学書を引用してあり、現在では地上から失われた多くの佚書を、この医心方から復元することができることから、文献学上非常に重要な書物とされる。
医心方は、撰者丹波康頼により984年(永観2年)朝廷に献上され、宮中に納められていたが、1554年に至り正親町天皇により典薬頭半井(なからい)家に下賜された。

幕末までにその多くが失われていたとされ、丹波家の末裔である多紀家(半井家と並ぶ江戸幕府の最高医官)が復元し刷らせている。

幕末に、江戸幕府が多紀に校勘させた「医心方」の元本には、半井家に伝わっていたものが使用された。この半井本は、1982年同家より文化庁に買い上げがあり、1984年国宝となっている。

【槇 佐知子(翻訳家)

槇 佐知子(まきさちこ)さんは1933年生まれの御年80歳。

1974年よりこの日本最古の医学善処『医心方』の研究邦訳を始め、独学で現代語訳を続け、1993年から『医心方全訳精解』全30巻を逐次刊行し、ついに2012年完結しました。

いつ完訳できるかもわからないライフワークの生活を支えるために児童文学の執筆活動を続けながらのお仕事だったようです。

その歳月や実に38年にも及ぶ日本の科学技術振興に偉大な足跡を残した一人と言えます。パピルス賞(関科学技術振興記念財団)を受賞されています。


【批評家の書評

しかしながらある批評家は彼女の偉業で完訳された『医心方』に対して次のような書評を寄せる人もいます。

「槙佐知子訳『医心方』の問題点 「果敢な挑戦」ではあるが、学術論文にそのまま引用できな
い水準 出版元である筑摩書房の担当編集者は怠慢の極み」という論評で、以下のような天を指摘しています。

1. 槙氏が医学や中国学の専門家ではないために、訳注の付け方や写本の校訂の仕方が恣意的で、典拠不明の文言があり、細かい誤りが多い。
2. 誤りが多いだけでなく、明らかに校正不足。
3. 槙佐知子訳は、学術論文に於いては、そのまま引用してはいけない水準。
以上の理由で、高価な書籍だが、そのままでは到底使えない「専門書の現代語訳」であると酷評している。
【偉業は偉業に他ならない

昔からことわざがある。「言うはやすし、事成りがたし」と。
評論は誰でも出来るが、完訳は彼女以外に誰も出来なかったであろう。誰も手を付けたがらなかったとも言える。だから彼女がやる以外にこの偉大なる知的遺産、日本の国宝的遺産を後世に残すことはできなかったと言えます。
先ほどある評論家の評論をご紹介しましたが、それを評論できるだけの知識を有しているのなら批評するにとどまらずに、彼女の偉業を指摘するだけでなく、自分の出来る範囲で彼女の業績で不足や補足する部分を修正、補う協力してはどうだろうか?そうでなければ、「批評は有益ならず」とも言えます。
慎さんの「医心方完訳」という国宝的偉業に敬意を払い、その上で「改訂医心方」を目指して多くの専門的知識を有する人々が分担して作業を続けられることを心より望みます。

2 Responses so far.

  1. skydog より:

    その通りと思う。書評で「旧唐書と新唐書とを区別せよ」とも書いているが、医心方の成立時に新唐書は存在しないので、実質的に無意味な指摘である。
    おそらく「ただの主婦」に偉業を成し遂げられたことが悔しいのだろう。
    単なる嫉妬で書いていることが文中から透けて見える。
    人間こうはなりたくないものだ。

  2. Kensai より:

    トロイの遺跡発掘のハインリヒ・シュリーマンとその偉業を批判した学者たちを思い出した。学者の嫉妬は醜い。
    この医学全書全巻 、主要な図書館にも置かれることを望みたい。

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